作家事務所とは《作曲家・作詞家が所属する音楽作家事務所の役割》

– 音楽が生み出され、世に出るまでの工程 –


普段みなさんが耳にする音楽。

その音楽がどのようなものであれ、ほとんどの音楽は
「プロデューサー」が企画・統率を行い、「ディレクター」が各セクションの進行管理や指示統括を行い、「作曲家」が作曲をして、「作詞家」が歌詞を書き、「編曲家」がアレンジを行い、「演奏家」が生楽器を演奏して、「シンガー」が歌を吹き込み、「レコーディングエンジニア」が演奏や歌唱を録音し、「ミックスエンジニア」がミックスダウンを行い、「マスタリングエンジニア」がマスタリングを行い、やっとのことで世の中に出る“皆さんが耳に入れる音源”としての1曲が完成します。

楽曲制作の部分だけでも、とてもたくさんの専門家が関わってやっと完成するのですね!笑
(これらの工程の複数を一人がいくつかまとめて兼任担当する場合もあります)

そして、この楽曲制作の前には「企業」「レーベルや事務所」「メディア」などの「クライアント」が存在していることがほとんどで、楽曲制作が完了した後には、アートワークやジェケット写真やライナーノーツの制作を「デザイナー」「フォトグラファー」「ライター」が担当し、CDプレスやパッケージの工場で盤となり、広告・販促活動を受け持つ「代理店」などがプロモーションを行い、流通を受け持つ「ディストリビューター」を経て市場に公開されて行きます。

– 作家事務所の作家=メロディーと歌詞のスペシャリスト –


その中でも「作詞」「作曲」の部分を担うのが作詞家と作曲家。
わかりやすく言うと、「歌詞」と「メロディー」の超スペシャリストです。

また、作曲家はその役割りによって「トップライナー(メロディーメーカー)」と「トラックメーカー」の2タイプに分類されることもあり、英語では作曲家のことをコンポーザーやソングライターと呼ばれることが多いです。
※海外ではトラックメーカーのことをプロデューサーと呼ぶこともあります。

それぞれの個性や感性と才能と努力を武器に、ヒットソングや人々に愛される曲作りを行い、主に印税や制作費で収入を得ています。

その「作曲家」「作詞家」(や「編曲家」)が所属しているのが「作家事務所」です。

事務所に所属していないフリーランスの作家もたくさんいらっしゃいますが、特にメジャーアーティストなどへの楽曲提供を行う場合は、作家事務所と専属契約・準専属契約・マネジメント契約を結んでいる作家が担当することが多く、作家事務所にも“アイドルソングに強い事務所”や“映画音楽に強い事務所”“ゲーム音楽に特化した事務所”などなど、それぞれ色んな特色やカラーがあります。

作詞家や作曲家などの作家にもそれぞれ強みや個性や専門性があり、その作家達が所属する作家事務所にもそれぞれ強みや個性や専門性があるのですね!

– 作家事務所の役割 –


作家事務所の大きな役割としては、一般的には次の2つを担うことが多いです。

①マネジメント

作家が自分の仕事(制作活動)に集中・専念できる環境を提供するために、対外的な各交渉や契約業務、事務作業や営業活動、業務管理、税務アドバイスなどを事務所が行います。
これはタレント事務所やモデル事務所なども同じような役割を持っており、所属作家さんに「安心」を提供する部分、そして「守り」を強くする部分ですね。

また、発注者側にとっても実績と信頼のある事務所を経由して仕事を発注できることはクライアントにとっての「安心感」にも繋がります。

そして音楽業界に限らず、クリエーターさんや職人さんが自分でセルフマネジメント行おうとすると、色んな意味でとても大変なことが多いです(そして、とても苦手な人が多いです…笑)

②コンペ獲得・コンペ参加のチャンス

※コンペ=楽曲のオーディション
クライアントが、「○月○日に、このアーティストでこんな感じの新曲をリリースしたい!」
と作家さんにオーダーを出したい場合、全国の作家さん一人一人に連絡するのは流石に大変すぎますよね。

そこで、クライアントは付き合いのある作家事務所に「○月○日に、このアーティストでこんな感じの新曲をリリースしたい!」とコンペ情報のオーダーを出して、コンペを獲得した事務所は(時に、その事務所でも社内コンペを行い)、クライアントのオーダーに刺さる作品をつくって提出する_という流れでコンペが進むことが多いのです。

作家事務所に所属することは、ヒットメーカーへのチャンス獲得の第一歩。
ここは、所属作家さんに「機会」を提供する部分、そして「攻め」をブーストする部分ですね。

《まとめ》

つまり作家事務所の役割の本質とは、
作家がやるべき仕事に専念して、チャンスを最大限に活用し、「攻め」と「守り」のバランスを武器にして、個々の強みを最大限に活かせる環境を提供することなのですね!

– 作家事務所に所属するメリット –


最後に、マネジメントとコンペ以外での、音楽作家事務所に所属するメリットをいくつかご紹介したいと思います。

コライト(共作)の可能性が広がる

近年、日本国内でも市民権を得たきた「コライト」
共作詞・共作曲や共編曲など、作家それぞれカラーの有機的なシナジーは、新しい世界観の作品を数多く世に生み出しています。
事務所に所属することで、他の作家陣や提携事務所のクリエーターとのコライトの可能性が広がりますね!

チームで動ける(助け合い・仕事の割り振り)

例えば、ゲームのタイトルソングをコンペ獲得した事務所には、「このゲームの音楽やサウンド、まるっと御社にお願いします!」というバジェットでの受注にも繋がるかもしれません。
テーマソングだけでなく、ゲーム内のBGMやSE、挿入楽曲まで、一貫してクオリティーコントロールをしながらひとつの事務所で仕事を割り振って、助け合って制作を進めることが可能です。

また、提携レコーディングスタジオや提携プロダクションを持つ作家事務所の場合は、レコーディングやライブサポートの手配まで受け持つことが出来るため、クライアントの作品にトータルで関われることも大きな魅力です。

業界のルール・マナー・知識・プロとしてのリテラシーが上がる

本やネットには書いていない業界慣習も多い音楽業界。エンタメ業界。
業界のマナーや知識を知っているのと知らないのでは、良くも悪くもクリエーター人生を大きく左右することに繋がります…ここも、とても大事な部分ですね!
事務所に入ると、成功談だけじゃなくて、きっと先輩達の「やっちまった失敗談」とか聞けるはずです。笑

ヒットの打率が上がる

事務所の先輩や仲間の経験は、事務所に入る一番の財産と言っても過言ではありません。
ヒット経験のある作家に囲まれる環境、そして仲間と切磋琢磨・情報交換できる場こそが、成長の上昇気流を生み出して、自身のヒットの確率が大きく上がることに繋がるでしょう。

事務所の看板(信頼感)

何の仕事でも、一番大切なことは「信頼感」。
みんな最初は新人でした。いきなり個人で大手と大きな仕事を出来るのはとても難しいですよね。
新人さんも、最初は所属した事務所の看板の力を借りて実績を積み上げることで、みんなで信頼感をつくっていけることもメリットのひとつです。

業界とのパイプ

音楽業界やエンタメ業界の「縦のつながり」と「横のつながり」がグッと広がるのも、メリットですね。そこから更に仕事の可能性が広がりますし、フリーランスで活動するのとは比べ物にならないくらいに業界に「場馴れ」することが出来ます。

自社コンテンツや自社ビジネスモデル

事務所によっては、自社でコンテンツ制作を行っていたり、オリジナルのビジネスを展開しているところも増えてきました。
エンタメは他の業界と「掛け算」でビジネスやコンテンツをつくることがとても魅力的な部分なので、作家事務所に所属することで新しいビジネスに携われる可能性も開けるかもしれません。

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